【書評】誰もツッコまない、ひろゆき『働き方 完全無双』―「天下無双」ではなく「無双仕立て」の“無双”では?
はじめに
僕は「好きなことで生きていく」ためにフリーの芸人として活動を始めた。
そう思っていた。
僕は「皆が好きなことで生きる」世の中に出来たら良いなと心の底から思っている。
小学校から高校を卒業するまで一貫して卒業文集に「教師になりたい」と書いたのもこの価値観を生徒に伝え、進路選択・職業選択に臨んでもらいたかったからだ。
結局、教育実習で実感した「手の届く範囲の狭さ」に理想とのギャップを感じて教員就職の道は選ばなかったのだが、いまのところ後悔はしていない。
そして今、僕ははたして「好きなことで生きている」と言えるのか?
芸人としての収入はチケット代手売り分の半額バックだとか、MCとネタやって交通費にしかならないだとか、エントリー代を逆に払ってライブに立たせてもらうこともある。お笑いで飯を食えてないので、不動産投資の営業をして生計を立てている。
現時点で僕が成功者かどうかはおいといて、「皆が好きなことで生きる」とはいったいどういうことなのか?どうすればいいのか?を考えるヒントになったのがこの一冊だ。
ひろゆき『働き方 完全無双』感想
このブログがアフィリエイトブログだったら、この本を売る文章をもっと練って書くべきなんだろうけど、開設して間もないのでamazonアソシエイトに審査を跳ね除けられた!あー!
今回は素直にオススメするので各自書店で手に取ってもらいたいよ!
こちら電子書籍版が発売されておらず、単行本で入手するしかないので!
まず僕は個人的にひろゆき氏の考え方が好きなタイプです。
感情論をおいといてロジカルに物事を考えるってトコまでなら割とできそうに見えるんだけど、それで実行してるかどうか?ってなると多くの人は「頭ではわかってもできない」になっちゃう。そこで実行に移せるから好き。逆になんでやらないわけ?って。
ベーシックインカム関連は今回の記事では検討しないけど、発想自体には賛同です。
「働き方」を「無双」するための本
この本のメインテーマはタイトルからも分かるとおり「働き方」。
個人として「攻め方」と「守り方」を身につけつつ、企業の経営者視点で考え、常に良い環境で“無双”状態で働く方法を非常にわかりやすい論理で紹介してくれています。
めちゃくちゃ読みやすいです。
先ほど「頭でわかってるのにできない」人が多いと書きましたが、この本はその段階で「じゃあどうすればできるの?」という人のためのテクニックや心構えが描かれてる感じ。
“無双”するとは?
“無双”という言葉を聞いて思い浮かぶのは、『三國無双』『戦国無双』のテーマにもなった、並び立つ者のないほど優れた様。天下無双。
この本を手に取る時、「俺も天下無双になるぜ!」なんて考える人も多いでしょう。
無双状態ってのはマリオがスターを取った時みたいな、敵をバッタバッタと倒して突き進める状態を想像しちゃいます。
ただ、この本に書いてあるのは、個人レベルで攻めのモチベと守りのモチベを上手いことより合わせて、「働きたい」と「働きたくない」の一見相反する感情を同じベクトルに向けて最高のパフォーマンスを発揮するための論理です。
その先に目指すところは
相対的に見てより良い環境に身を置き、有利にワンチャン狙うこと。
…ん??無双、してなくない???
敵、バッタバッタ!!してなくない??
スターというよりファイヤフラワーとってヨッシーに乗るくらいのノリ。
そこだけしっくり来なくて調べたら、
むそう
【無双】
1.
並ぶものがないほどすぐれていること。無二。無類。 「天下―」
2.
衣服・道具などの、表・裏、内・外を同じ布、同じ材料で作ること。そのこしらえ。 「―羽織(ばおり)」
というのが見つかりました。
咄嗟に出てこなかったんだけど、このタイトルでは2の意味で使われていたとも解釈できる。 そう考えると腑に落ちますね。
働き方の「攻め」と「守り」を知ることは独立した知識ではなく攻めと守りを一体化させること、つまり働き方の無双仕立てを目指す本だったんだ!
ツッコミってほどのことでもないし天下無双の意味でとらえても十分にインパクトを与えてるのだけど、無双仕立てと結びつける人はちょこちょこ検索した限りでは見つけられなかったので書評のタイトルとさせていただきました。
キーワードは「好きなことで、生きていく」
本書でも第一章の1ページ目に登場する人物、youtuberのヒカキン氏は、このキーワードの代名詞ともいえる存在でしょう。
先日レぺゼン地球のDJ社長氏が「国民全員がyoutuberなったら日本終わるけどがんばってくれとる人のおかげで俺達は好きなことを出来ている」的なことを言っていたけどその通りで、国民全員がyoutubeの動画広告収入だけで生きようとしたらそりゃ無理だ!って感じ。
でも、好きなこと=youtubeって皆が皆そうじゃない。
得意なこと、熱中できること、実現したい野望、いろんな理由で職業選択ができるはず。生きてきた中で出会った様々な良い作品に感化されてクリエイターになってもいいし、困っている人を助けるために何かアイデアを出して実現に向けて起業するのもいい。
いろんな「好き」があるし、個人のやりたいことはバラバラで無限の可能性を秘めているのに、本当に自由に職業選択が出来ているのか?と言うとそうは見えない。
自分の「やりたいこと」が何か知るために
社会に出ていない学生・生徒でもなんとなく社会の目というのはわかる。親や教師や街中の大人、ネットの情報が目には見えない圧力として進路選択に響く。いや、見えない無意識の影響ならまだ後悔も薄いだろうが、大人の力で意志を曲げられるこどもも少なくない。
将来の夢が成長とともに変化していくなかで、本当に「やりたいこと」を根拠とともに自分で挙げられる子供は減っていく。親が望むから、世間が望むから、安定した正社員になりたいですと言わされて、その思想に染まって…「やりたいこと」はわからなくなっていく。
「やりたいこと」を自分に問うのは簡単で、ベーシックインカムが実現したら何をして生きたいか?がやりたいことなんじゃないかな。
やりたいこととやるべきことの一致+α
「やりたいこととやるべきことが一致した時、世界の声が聞こえる」と某綺羅星アニメでも言ってたけれど、人が本当に進むべき道はこの一言に尽きる。
そして、大体の人がそれはわかっている。
頭ではわかっているけど、できない
なぜなら、今の世の中で「働く」と言うと
「やりたくないこと」や「やる必要のないこと」をさせられるのがセットだから。
そこに妥協が生まれる。
「生きるために好きじゃないことをさせられる」状態になる。
その中でも好きなことややりたいことに近い業界に居られることは幸せな方で、単純に時間と労力を切り売りして生命維持してる人たちもいるのがどれだけマズイことか。
この本はその妥協を如何にうまく、反発する力を相互作用させて前に進む力にするのか?というテクニックと知識、考え方を提供してくれる。
(たとえば「やりたくないこと」を楽しむという発想の転換法とか、ブラック企業からの身の守り方とか。)
「好きなことで生きる」という「攻め方」
「生きるために好きじゃないことをさせられる」から脱するための「守り方」
この2種類を、ひとつにまとめる。
やりたいことと、やるべきことと、やりたくないことと、やらなくていいことを全部一致させたとき、個人は“無双”仕立てになれるのだ!
「全員が好きなことで生きる」にまで昇華すると、ベーシックインカムのような社会としての変化が前提にないと難しいけど、個人レベルで「好きなことで生きる」だけならこの本を読むことがきっとあなたのためになります。
終章では、海外と日本とを比べたうえで日本の生き残る道、生存戦略を挙げています。世界の他の国を分析し、日本には何があるのか?何で戦うべきなのか?と。
これは個人レベルでも言えることです。無双状態を手に入れ、早いうちに生存戦略を立てるためにも書店へ足を運ぶことをオススメします。
あなたがまだ「好きなことで生きている」人じゃないのなら。
フリー芸人の感想
冒頭でも述べた通り、ぼくは今会社に勤めていません。
大学を5年で卒業したと同時にフリーの芸人として活動し、経済的には苦しい生活の中だけども「好きなこと」をしています。
でも、お金を得るために投資用不動産のテレアポをやっています。
これは、時給が高く髪色服装自由で、歩合ボーナスもあり、急なライブでシフトに穴をあけても迷惑が掛からず、土日祝は完全休業という芸人が兼業するのに最も向いているバイトだと考えるからです。
テレアポは身体も疲れないし、基本座って電話してるだけなうえ、今の職場は1時間に1度の10分休憩もあり、水分補給も自由という環境です。
会話中は難しいですが、呼び出し中にはネタを考えることも出来ます。
18時以降まで残業したことも1度もなく、ライブの日に休んで小言を言われたこともありません。
(居酒屋バイトは人が減ると困る場面や、拘束時間の長さ、土日も営業してる等の点で個人的には芸人には向いてないと思うのですがやってる芸人多くて不思議です。)
今アランは「好きなことで生きて」います。
芸人に集中するため短時間でドカンと稼ぐことを目論んで歌舞伎町でホストして生活リズムと酒とストレスで身体と精神ぶち壊した時、あれは今思うと「生きるためにしたくないことをする」が含まれていたと思います。(おおむね楽しい思い出なので好きな事してたっちゃしてたんだけど)
その時の僕には「休む」という選択肢がギリギリまでなくて、頑張ればまだまだいけるしここで頑張る奴が売れる奴だと狂信してました。
正社員は辞めにくい、と聞きますが当時の僕も個人事業主として「後がない」と思うことで自分を頑張らせようとしてたので似たような感じでした。
「攻め方」ばかり考えて、「守り方」は蔑ろにしていたのです。
もしこの本をその時読んでいたら、迷わず「守る」ことが出来ていたと思います。
少しでも現状に満足していない人は、まず読んで自分を「守って」から「攻め方」も知るのが良いかと思います。
さいごに
すぐに寝る技術というのは目からウロコでした。
あと巻末のオススメ映画や観光地、地味にわくわくする!